おでかけ

山陽電車に乗ってお酒を嗜む旅 ~江井ヶ嶋酒造編~

寒さが深まり、年末へ向けた行事も始まる師走。
冬の澄んだ空気をあたためるのは、あたたかい料理とおいしいお酒。
そんな季節にぴったりなのが、多彩な酒造巡り。

山陽沿線には、いろいろな酒蔵が点在しています。
そんな魅力あふれる酒蔵の魅力を山陽電車の若手社員がレポートします。
今回は前編として、100年以上の歴史を持ち、名酒「神鷹」で知られる明石の「江井ヶ嶋酒造」を訪ねました。

江井ヶ嶋酒造の最寄り駅は「西江井ヶ島駅」です。
2020年に美装化され、酒蔵をイメージした駅舎になりました。

白い壁と和の雰囲気を感じる駅舎

駅から徒歩8分ほどで江井ヶ嶋酒造へ。
杜氏の中村裕司さんに案内していただきました。

播州平野の肥沃な土壌と清らかな水に恵まれた明石は、江戸時代から酒づくりがさかんでした。
江井ヶ島でも、旧家であるト部家の二代目ト部八兵衛氏の頃から酒づくりをはじめ、五代目ト部兵吉氏が事業を拡大し、1888年(明治21年)に江井ヶ嶋酒造株式会社を設立しました。

日本酒だけではなく人気のウイスキー「あかし」も製造しているので、蒸留所も備えています

敷地内には7つの蔵があります。
同じ敷地内に7つの木造蔵があるのは日本でも珍しいそう。

現在、清酒に使っているのは四番蔵と五番蔵です。
酒蔵は木造で建てられており、外気の影響を受けにくい特性が活かされているとのこと。
まず、四番蔵を案内していただきました。

四番蔵は「醗酵を終えた醪(もろみ)をしぼる蔵」

こちらが日本酒の原料である酒米です。
山田錦、ヒノヒカリなど、いろいろなお米を独自の配合で取り合わせています。
お米はすべて兵庫県産です。

大きな洗米機でお米を洗い、米ぬかやゴミを取り除きます。
手でお米を洗うのに近づけるように工夫されているそう。
酒米を丁寧に扱っているのですね。

浸水タンクで十分にお米を水に浸したら、お米を蒸します。
蒸すことで発酵しやすい状態になります。

酒米を蒸した後は冷まし、次の工程の場所まで運びます。
重量のあるものを扱いますが、江井ヶ嶋酒造では作り手の負担にならないよう、できるだけ機械化を進めているそうです。

次の建物へ。
ずらりと並んだタンクの中に、酒母、麹、水、蒸し米を入れて酵母の発酵を待ちます。
この建物は阪神淡路大震災の際にも被害を受けなかったと伺い、大きな柱を組み合わせた「組木」の構造の強さに驚きました。
フタが見えていますが、タンク本体は床の下にあります。

柱や壁には生きた麹菌が存在しており、酒造りにおいて大切な働きをします

こちらがタンクの中です。
混ぜると泡が出て、アルコール発酵をしているのがわかります。
まさに生きている証拠ですね。

床の下にあるタンク本体です。
昭和35年から使用しているホーロータンク。
発酵熱を抑えるために冷水で調整しています。

1つのタンクの容量は一升瓶5,000本分に相当するとか!

こうしてできた醪(もろみ)は「上槽」という作業によって清酒と酒粕に分離され、さまざまな工程を経て完成します。

転落しないよう、仕込み水などは先ほどご紹介したフタから入れます。
安全を最優先に考える姿勢が徹底されており、以前は大きな樽にハシゴを掛けて作業を行っていましたが、事故を防ぐために2階の床に穴を空け、上から原料を流し入れる方法に改良されたそう。
こうした工夫の積み重ねが、安全で持続的な酒造りを支えているのだと感じました。


最後に、「大歳三番倉の釜屋」を改造した資料館を見学しました。

醸造に使用されていた古い器具類や会社創立時代の帳簿書類、当時のポスターやラベルなど、貴重な資料を見ることができます。

「神鷹」は明治28年に登録されたとのこと

左からお酒を計量する「一斗桝」、「一升桝」、そして、竹製の蛇口「龍の口」、蒸し米を甑(こしき)から掘り出すのに使う「ぶんじ」など。

古い帳簿類や書類なども大切に保存されています。

甑(こしき)を上に置き、湯を沸かして、甑の中の米を蒸す「和釜」など、大型の道具類も。

見どころの展示がこちら。「一升瓶」の製造です。
江井ヶ嶋酒造では、他に先駆けて明治32年に一升瓶酒の製造を開始。
それまでは、樽と徳利がお酒の容器で、中には無断でラベルを貼り替えた偽商品が流通してしまうことがありました。
そこで自社で製瓶工場を建設、一升瓶での販売を日本で初めてスタートしました。
品質保持の点でも優れた画期的な取組みで、広く世間に知られるようになりました。

当時の製瓶工場の様子

資料館を巡ってみて、酒造りの歴史と、本物にこだわり真においしいものを届けたいという強い意思を感じました。
昔の写真や道具を間近で見ることもでき、酒蔵や製造方法について学ぶだけでなく、歴史的な背景にも触れられる大変見ごたえのある展示でした。

資料館を出て、敷地内も案内していただきました。
酒造りを安全に進めるべく、また効率的・合理的な作業を行うために、鉄筋建築や機械設備も積極的に取り入れられており、伝統を大切にしながらも、安全性や作業効率の向上のために柔軟に改良を重ねている点に感心しました。

中村さんが仰った「美味しいお酒を造るのは大切です。第一には安全にお酒を造ること。電車も同じ、山陽電車さんとも通ずるところがあるでしょう?」というお話が特に心に残りました。

杜氏という職業を志した理由をお尋ねすると、「ケーキを好きな子がケーキを作ってみようと思うのと一緒」と笑顔で話されました。
好きなものを探求し続ける情熱や行動力の大切さを感じ、杜氏として活躍されている姿が素敵でした。

敷地内からは美しい海が見えます。自然豊かな環境で作られているのですね

1988年に100周年を記念して建てられた白亜の社屋。

こちらの直売所では、江井ヶ嶋酒造の豊富なラインナップのお酒に加え、限定品やオリジナルボトルなども販売されていたので、ぜひまた伺いたいです。
実際に酒造りの現場を知ることで、日本酒の美味しさをより深く感じられそうです! 

こちらは12月から発売の冬季限定の「神鷹 新酒 初しぼり」(990円)。
フレッシュな味わいを楽しめるよう、お求めやすい価格帯で作っているそうです。
お正月などにもぴったり。
ぜひ、味わってみてください。


Information

住所明石市大久保町西島919
営業時間9:00~12:00、12:50~16:00
定休日 土・日曜・祝日
年末年始の営業■ 年末:12月29日(月)12:00まで
■ 年始:1月5日(月)9:00から営業開始
アクセス「西江井ヶ島駅」 徒歩約8分

お問い合わせ

江井ヶ嶋酒造

https://www.ei-sake.jphttps:/※見学ツアーも不定期で実施。
詳しくはHPをご覧ください

お得なきっぷ情報はこちら

SHARE