「乗り心地の悪さ」がクセになる 須磨浦山上遊園で昭和レトロに会う

暖かな日差しと、海風が心地よい須磨浦公園駅に降り立つ。

ここは須磨浦山上遊園の最寄り駅で、多くの家族連れや観光客の姿が目にとまる。

近頃、SNSで話題になった「乗り心地が悪い『カーレーター』」や回転展望閣が、レトロで懐かしいと若者を中心に人気を呼んでいる。そんな須磨浦山上遊園も1957(昭和32)年の開園から来年で70周年を迎える。今回は、エスコート編集部のメンバーが実際に足を運び、開園当初からの古い写真と比較しながら、昭和レトロな風景をお届けする。

開業時の須磨浦公園
レトロなたたずまいの須磨浦公園駅の駅舎。改札を抜けて、右側にある階段を登るとロープウェイ乗り場に到着

ロープウェイ乗り場に到着すると、愛らしいカラーリングの客車が出迎える。「うみひこ」「やまひこ」と愛らしい名称が付けられている。そんな“双子くん”は、日々多くの乗客を山頂へ、ふもとへ送り届ける。

左から「やまひこ」「うみひこ」(いずれも合成)

いざ、搬器に乗り込んだ。発車ベルが鳴ると、「やまひこ」は山頂を目指し、ゆっくりと動き出した。ふと後方を振り返ると鮮やかな新緑と日差しに照らされた海が、眼下に飛び込んできた。

新緑が山肌を鮮やかに彩る。左後方に見えるのは、神戸市立須磨海づり公園

あっという間に鉢伏山の中腹に到着。今回は案内役を須磨浦山上遊園担当の田村将樹さんにお願いした。早速、目の前に現れたカーレーターの説明を聞く。「カーレーターは「車のカー」と「エスカ『レーター』」をかけ合わせた造語で、急な坂を座ったまま動く登山道として、1966(昭和41)年に導入し、今年でめでたく還暦60周年を迎えました」と田村さんは話す。過去には滋賀県のサンケイバレイ(現・びわ湖バレイ)にもあったが、国内で唯一現存するのは須磨浦山上遊園のみで、レア度は高い。

60周年記念で赤いちゃんちゃんこを身にまとったカーレーター。「人気の乗り心地の悪さを保つために維持管理しています」と田村さんは笑顔で話す

さっそくカーレーターに乗り込んでみる。いきなり上下に揺れる振動に思わず笑ってしまう。確かにこれは乗り心地が悪いが、「レトロなアトラクション」をほうふつさせる。

全長は91メートル、勾配は25度で急斜面を約2分かけて登り山頂を目指す。大きな機械音や乗り心地の悪さも良い意味で昭和レトロを感じる

鉢伏山頂に到着すると丸い建物が目に入る。外観から良いレトロ具合に、胸が高鳴る。早速、中に足を踏み入れてみよう。

営業開始当初から今もその姿をとどめる。展望席がぐるりと回り360度の景色が楽しめる「回転展望閣」

早速2階の入り口に入ると目に入ってきたのは、懐かしいゲームセンター。置いてあるゲーム機もレトロな個体ばかりで、幼いときにゲームに熱中した記憶を思い返す。

数十台の懐かしいゲーム機がフロアにずらりと並ぶ
長年慣れ親しんだボールマシンが無くなり、寂しさを感じていた山陽姫路駅利用者の皆さん、安心してください!ここにありました!

そんなゲームセンター横の階段にひっそりとたたずむ「箱」に目がとまる。姫路で育った人にはこれまた懐かしく、幼少期の好奇心を駆り立てたあの「ボールマシン」が置かれている。田村さんは「山陽姫路駅の駅舎リニューアルに伴い、ここに運ばれてきたんです」と紹介する。

ボールマシンに別れを告げ、3階へ上がると甘い香りが漂う喫茶室「コスモス」へ。メニュー表にはクリームソーダやパンケーキ、神戸市民のソウルフードそばめしも。どれも食欲をそそる内容。早速注文し、外の風景を楽しみながら待っていると、赤いチェリーとメロンソーダの組み合わせがレトロで可愛いクリームソーダと、甘い香りがするパンケーキができ上がった。

メロンソーダとフワフワながらもしっかりとした食べ応えのパンケーキ。あっという間に完食してしまった
甘辛いソースに絡まったライスとそばの組み合わせにスプーンが進む
地元の漫画家で彫画家だった故・伊藤太一さんの作品3種がコースターに。温かみのある優しい作風が、喫茶のひとときに彩りを添える
喫茶室「コスモス」の看板が過去にSNSでバズったと田村さん。キーホルダーもお土産で作ってみたら、売れ行きも良いそうだ

喫茶室で腹ごしらえを済ませ、屋上に上がると絶景が飛び込んできた。窓ガラス越しでも景色を楽しめたが、ここでは視界を遮るものなく、青い海に青い空をまるで鳥の目になった気分で味わえる。

展望閣左手には神戸空港や神戸の街並みが一望。右手には明石海峡大橋や淡路島を見ることができる

景色を堪能したら、一人乗りのリフトに揺られ、向かいの尾根に向かって進み旗振山の山頂を目指す。このリフトも昔から須磨浦山上遊園へ来場者を運んできた。

写真手前が「はりま駅」、奥が「せっつ駅」。全長268メートルをリフトに揺られながら進む。大きな荷物があっても、後ろのリフトで運んでもらえるのでご安心を

旗振山に到着。須磨浦山上遊園の最奥部だ。ここには子どもも楽しめるレトロな遊具が多くあり、まさに「遊園」だ。

須磨浦ミニカーランド(1978(昭和53)年3月撮影)
レトロ感満載な配色ととんがり屋根が愛らしい
硬貨をいれると動き出す「ミニカー」。子どもが乗り込み“ドライブ”を楽しんでいた。昔デパートの上にもあったなと思い返しながら懐かしい気持ちに
ミニカーランドで遊んでいる子どもを長年見守っているのが、ここのマスコット「スマちゃん」と「ユウくん」。かわいいのに見かけたのはここだけ
チビッコ広場に設置されるシカやカメの遊具。昭和な公園にあった記憶がよみがえる

すでにレトロ感でおなかがいっぱいになりつつも、面白そうなアトラクションを発見。その名も「サイクルモノレール」。山頂から広がる雄大な風景を間近で楽しめるとあって大人気。田村さんは「SNSで大阪・生駒山や岡山・鷲羽山のサイクルモノレールが話題になりました。もちろんここでも園を代表する人気のアトラクションです」と話す。

2人乗りの自転車で空中散歩。地面との距離は3〜8メートルほど。明石海峡大橋と街並みや、神戸空港を離着陸する飛行機が見られる

サイクルモノレールのある場所から5分ほど坂を下ると、不思議なアーチ状の構造物が見えてきた。その正体はかつてカラフルな照明が彩るなか、BGMに合わせて変化する噴水ショーで多くの来園者を楽しませてきた「ドレミファ噴水パレス」跡地。今は屋根の一部だけが残る。

かまぼこのような建物が特徴的なドレミファ噴水パレスは1969(昭和44)年に開業
現在は屋根の一部だけが残る
ドレミファ噴水パレス跡地は、現在は花の広場に。端午の節句を目前に控えたこの日は、青空に小さなこいのぼりが泳いでいた

古き良き昭和の香りが今も色濃く残る須磨浦山上遊園。若い人たちには記憶がなくても、どこか懐かしさを感じられる場所だ。ご年配の方には、当時の思い出が鮮やかによみがえるのではないだろうか?

昭和に撮影された建設工事中の須磨浦公園駅。
1957(昭和32)年6月駅開業からまもなく70年を迎える

ここには、カーレーターを始め、回転展望閣など、多くの『レトロ』が残っています。
また山上から見える景色は格別です。写真映えするスポットも多いので、ぜひ皆さまのお越しをお待ちしています

須磨浦山上遊園の細部まで知る田村さん

※2026年4月16日の取材時点の情報です。

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