須磨寺の参道沿い。須磨寺商店街にのれんを掲げる天ペロは、甘味処を備えた和菓子店。
最初は2008年にかりんとう饅頭専門店としてオープン。和食の料理人だった井上さんが電器店を営んでいた父の後を受けて店を開くことになり、手軽に食べてもらえる和菓子の販売に狙いを定めたという。


まずは「かりんとう饅頭」(150円)を極めようと試作を開始。「中に入るあんこはしっかりめの甘みとねっとり感にこだわり、生地とのコントラストを大事にしました。黒糖風味の生地は、小麦粉や黒糖の種類を変えながら数えきれないほど試しました。考えて考えて夢にまで出てきました」と、開店前の試行錯誤を振り返る。
さらに難しかったのが饅頭を揚げる油。あっさりなのにコクがある味わいを追求してブレンドを工夫。パーム油や米油など複数の油を組み合わせ、納得できる揚げ油にたどり着くまでの道のりは長かった。現在は「これだ!」と思えた讃岐産の薄力粉を含め、ベストな素材のオールスターで自慢のかりんとう饅頭を作っている。出来たてのさくさく感を家庭で再現できるよう、店頭ではあえて冷凍状態で提供する。

かりんとう饅頭と並ぶ看板商品の「おはぎ」(200円)は、粒あんときなこの2種類で勝負。しっかり大きめながら、あんの甘さを控えめにすることで最後まで飽きずに食べられるよう工夫した。須磨寺とのコラボも活発で、副住職の小池陽人さんの法話にちなんだ「お陽さままんじゅう」(160円)は、門前町ならではのありがたいお菓子だ。

5年前には「参拝の行き帰りに一服したい」との声を受けて甘味処をオープン。和菓子とお茶やコーヒーのセットのほか、季節のメニューをそろえる。夏はやっぱりかき氷。「かき氷は和食でいう刺身。刺身にはよく切れる包丁が必要なように、かき氷はよく切れる刃で削るのが大事なんです」。包丁を研ぐようにかき氷器の刃をこまめに研ぎ、常に最高の切れ味をキープ。極限まで薄く削ったふわふわの氷に和食の技を生かしている。


氷に加えてシロップも研究を重ねてきた自信作だ。一番人気の「いちごミルク」(1,100円)のシロップは、旬のおいしいいちごを大量に仕入れて急速冷凍。「冷凍庫がパンパンになって大変なんですけど、ほんまにおいしいフレッシュなシロップです。暑い日はお参りも大変。氷でも食べてゆっくり涼んでもらえたら」と笑顔で話す。

今年の夏は、担い手不足で休止していた須磨寺公園の盆踊りの復活を仲間たちと計画している。
「僕にとってここはかけがえのない場所。お寺があって商店街があって、昔ながらの文化もある。それを全部大事にしたい。ここにこんなお祭りがあることを子どもたちにも、ここを訪れる人にも知ってほしいんです」と、忙しい合間を縫って準備に奔走中。

天ペロという一風変わった店名は、ポルトガル語の天ぷら「テンペーロ」と、お寺の「テンプル」から生まれた。今ではすっかりまちの風景にもなじんでいる。「こだわらないとおもろない」がモットーの井上さんは、こだわりの商品とともに今日も歴史ある須磨寺の参道で多くのお客を迎える。「おいしかったからまた来たよ」の声が何よりうれしいそうだ。
2026年6月11日(木)現在の情報です。
