山陽電車に乗り、車窓から外を眺めていると、心が動く瞬間がある。「あ、ここの景色、今すごくきれい」――。そんな小さな発見に出会えるのも、電車に乗る楽しさの一つ。
今回は、山陽沿線で見つけた風景を巡りながら、写真を撮るときに少し意識したいポイントをご紹介!
滝の茶屋駅

最初に訪れたのは、神戸市垂水区にあり、三宮から普通電車で約30分の滝の茶屋駅。プラットホームに降り立つと、爽やかな青が印象的な風景が広がり、どこかレトロな雰囲気に懐かしさを感じる。
瀬戸内海の海を展望できるロケーションが人気で、韓国の5人組ボーイズグループのTOMORROW X TOGETHER(トゥモロー・バイ・トゥギャザー)さんがフォトブックの撮影に訪れたこともある。

まずはホームでパシャリ。
広い景色を撮るときは、ただ全部を入れるだけでは散漫になりやすいため、まず「この写真で何を見せたいか」を決めることが大切。今回は、海の近さと駅の日常を見せたかったので、ホーム、電車、海の青が一枚の中でつながるように意識した。
スマートフォンで撮る場合は、0.5倍の広角モードを使うと、駅の広がりや空の大きさを写しやすい。ホームの奥行き感、電車、海を一枚に入れることで、滝の茶屋駅らしい日常の風景が感じられる写真になった。

上り線へ移動しようと階段を上がり、視線をずらすと、渡線橋の窓から行き交う船が見えた。ここでは、窓枠を額縁に見立てて撮影。これは「額縁構図」と呼ばれる写真のテクニック。
窓越しに海を見ると、ただの景色ではなく、ふと外を眺めたような一枚に。
こうした少しの視点の違いで、写真にストーリーが生まれる。

青い柵の色も爽やかだったので、明石海峡大橋が見える背景と一緒に切り取った。スマートフォンで撮るときは、画面上で見せたい部分を軽くタップすると、そこにピントが合いやすくなる。奥の風景を見せたいのか、手前のものを見せたいのかを意識すると、写真の印象も大きく変わる。
この写真を見て思い出された方も多いのでは…?
そうです!「2025山陽沿線写真コンクール」の推薦(神戸新聞社賞)の写真も滝の茶屋駅で撮影されたもの。

次に、青空と線路を大きく入れ、入線してくる電車を絡めて撮影した。空と線路を半分ずつ入れると、すっきりとした画面になり、どこか物語のワンシーンのような雰囲気が生まれる。

ただし、駅のホームで撮影するときに一番大切なのは、良い写真を撮ることよりも安全とマナー。黄色い点字ブロックの外側に出ない、人の通行を妨げない、周囲の人が写り込むときは配慮する。無理をせず、立ち止まっても安全な場所から撮影を楽しもう。
滝の茶屋駅
所在地:神戸市垂水区城が山1丁目1-1
《的形》小赤壁公園
続いて向かったのは、見晴らしの良い高台にある小赤壁公園。
姫路市的形町にある小赤壁公園は、中国の「赤壁」に似た景観であることから名付けられたとされ、海に面した迫力ある断崖と穏やかな播磨灘の景色が楽しめる。

目の前に広がる海を見た瞬間、思わず深呼吸。
風景写真では、何かを大きく写そうとするより、空や海の余白をそのまま生かす方が、その場の気持ちよさが伝えられる。
この写真では、空、海、手前の緑が自然に分かれるように切り取った。三つの要素が入ることで、画面に安定感が生まれる。
風景を前にすると、つい海や空だけを撮りたくなるが、写真に奥行きを出すには、手前にある草地や道、木の枝などを少し入れるのが効果的。
自分がその場所に立っている感覚が生まれ、見る人も景色の中に入り込みやすくなる。

人物を入れるときは、必ずしも顔を写す必要はない。むしろ後ろ姿や横顔の方が、見る人の想像が広がることがある。誰かが海を眺めている。その姿があるだけで、写真に静かな時間が流れ始める。


足元にも目を向けると、また違った風景が見えてくる。何気ない緑の中にも、クローバーの愛らしさがある。大きな景色だけでなく、小さな発見を写真に残すのもフォトウォークの楽しさ。
見晴らしの良い展望台から、海を広く切り取るのもおすすめ!
小赤壁公園
所在地:姫路市木場
アクセス:「的形駅」から徒歩約20~21分(約1.7km)
駅を出て海側へ向かい、案内看板に沿って進むと到着します。「八家駅」からも徒歩約25~30分でアクセスできます。
江井ヶ島海岸
久しぶりに砂浜を歩いてみた。白い砂浜に、黄色の浮きが目に留まる。規則正しく並んだ姿が愛らしく、一枚撮影した。
何気ない風景でも、色や形に注目すると写真の主役が見つかる。黄色の浮き、白い砂浜。色の組み合わせを意識するだけでも、写真はぐっと面白くなる。


海辺では、大きな景色だけでなく、足元の小さなものにも目を向けたい。波打ち際では、水しぶきの動きも面白い。スマートフォンで撮る場合は、連写機能を使うのもおすすめ。波が砕ける瞬間は一瞬なので、連写で何枚か続けて撮ると、思いがけず迫力のある一枚が残ることがある。

夕方になると、沈む太陽と空を撮りたくなる。夕景は、空の色が少しずつ変わっていく時間帯。太陽そのものだけを写すのではなく、砂浜や人影、海面の反射などを一緒に入れると、その場の空気感が伝わりやすい。夕景は、太陽をそのまま撮るよりも、周りの空気まで写すつもりで構えると雰囲気が出やすい。海に反射する光、人や物の影、少し赤く染まった空。主役を太陽だけにせず、夕方らしさを感じるものを一緒に入れると、記憶に残る一枚になる。

夕景を撮るときは、画面を少し暗めにしてみるのもいい。スマートフォンでは、画面をタップしたあとに明るさを上下に調整できる機種も多い。太陽の周りが真っ白になりすぎないように少し暗くすると、空の色がきれいに残りやすい。
また、人や物の影を入れると、夕景らしい雰囲気が出る。完全に明るく写すよりも、少し影がある方が、印象的な写真になることも。
《山陽網干/平松》網干の工場夜景
夜になると、工場地帯の景色も魅力的。昼間とは違い、暗闇の中に光が浮かび上がり、幻想的な雰囲気に。水面に反射した光が幻想的で、どこか街並みのようにも見える。

夜景を撮るときに気をつけたいのは、手ブレ。暗い場所では、カメラやスマートフォンが光を多く取り込もうとするため、少し動いただけでも写真がブレやすくなる。
スマートフォンで撮る場合は、両手でしっかり持つ、手すりなどに軽く固定する、セルフタイマーを使うといった方法がある。シャッターボタンを押す瞬間の揺れを減らすだけでも、写真はきれいに写りやすい。スマホ用の三脚があれば、さらに安心できる。


先ほどの水面に反射した工場の夜景を望遠で撮った写真がこちら。パイプが折り重なり、細部のディテールの美しさもさることながら、どこかロックな雰囲気にも感じ取れる。夜景では、光のある場所を主役にすると写真がまとまりやすい。工場のともり、街灯、水面に映る光など、「どの光を見せたいか」を決めてから撮るとよいだろう。

光の一部を大きく切り取ると、印象的な写真にもなる。夜の風景は、昼間とは違う見え方を探す楽しさがある。暗闇があるからこそ、工場の光が浮かび上がる。すべてを明るく写そうとせず、光と影の差を楽しむ気持ちで撮ってみてほしい。
身近な沿線に、新しい風景を見つける
いつもの沿線も、カメラを持って歩けば、新しい風景に出会うことができる。車窓から見ていた景色。何気なく通り過ぎていた駅。ふと立ち止まった先にある海や空、光の表情。カメラやスマートフォンの画面をのぞくことで、普段とは違う視点が生まれる。
良い写真は、遠くへ行かないと撮れないものではない。いつもの駅、何度も見ている海、通り過ぎていた道。その中にある小さな変化に気づけるかどうかが、写真の面白さだと感じる。
見慣れた場所も、構図や光の使い方を少し意識するだけで、特別な一枚に変わる。この夏は、山陽沿線で自分だけの一枚を探してみてはいかがだろうか。
エスコート編集部のワンポイントアドバイス
写真を撮るとき、大切なことは機材よりも「どこに心が動いたか」に気づくこと。海の色、光の入り方、人物の立ち姿。何をきれいだと思ったのかを少し意識するだけで、写真はぐっと伝わりやすくなると感じる。特別なカメラがなくても大丈夫。スマートフォンでも、見方を少し変えるだけで、いつもの景色が印象的な一枚に変わる。
ただ、少しだけ撮り方を意識すると、写真はさらに楽しくなるので、撮り方のポイントを紹介する。
1つ目は、スマートフォンの0.5倍モードや「超広角レンズ」を使ってみること。駅や海、空のように広がりのある景色を写すときに便利。逆に遠くのものを撮る4倍モードや「望遠レンズ」、近くのものを接写する花マークのマクロ機能も試してみてほしい。
2つ目は、画面上で主役をタップすること。人物や花、遠くの景色など、見せたいものにピントを合わせると、背景が浮き上がってみえる写真が撮れ、印象的な仕上がりになる。
3つ目は、夕景や夜景では少し暗めに撮ってみること。明るくしすぎると、空や光の色が白くなってしまうことがある。夕焼けの色や夜の光を残したいときは、画面の明るさを少し下げると雰囲気が出やすい。上級者は後から編集機能で補正するのも良いだろう。
4つ目は、夜景ではセルフタイマーを使うこと。シャッターを押したときの揺れを減らせるため、手ブレを防ぎやすくなる。三脚があると、さらに安定して撮影できる。
