おいしくておもしろい新しいパン文化を発信中 <sunsun Side Story 山陽沿線きらりと輝く人の物語 vol.1>

BREADMAN明石|オーナー 水野 真吾さん

2025年4月にオープンした「BREADMAN明石」。国産小麦と厳選素材、生地にたっぷりの水分を含ませる高加水製法にこだわった注目のベーカリーだ。オーナーの水野真吾さんは、神戸のパン店の2代目。父が営んでいた垂水の店舗は長年地域で愛されてきたが、自身は東京へ。舞台装置に関わる仕事に熱中していた。転機は10数年前。体調を崩した父からの「店、やってくれへんか」のひとことだった。一念発起して面接を受けること7軒。ようやく雇ってくれたお店で修行を開始し、パン作りを基礎から学んだ。

「パン屋の息子とはいえ専門知識はゼロ。学校も行ってませんし、一から教えてもらいました」
関東、都心部をメインに10年勤め、製パンの技術を磨いて神戸にUターン。さらに神戸のベーカリーで働いた後、8年間閉まったままだった父のパン店を引き継ぐ形で2022年垂水に「BREADMAN」をオープン。たちまち人気店となり、2号店として誕生したのが「BREADMAN明石」だ。

立地は、明石と淡路島を結ぶ高速船「ジェノバライン」発着場の目の前。メタリックなトタンを使った外壁に、木のぬくもりをプラスした個性的な外観が目印だ。店内はまさにアートな空間。パンが並ぶのは宙に浮いたような円形の陳列台。商品は立体的に美しく積み上げられている。大胆な壁画は大阪在住のアーティストにオーダー、陳列台の上の華やかなドライフラワーは湊川の「フラワーショップ花元」で作ってもらったオリジナルという。

「素材や味はもちろん、空間やデザインにもこだわりました。来てくれた人にわくわくしてほしいし、おもしろいなと思ってもらいたいんです」
陳列台が高めで下にスペースを空けているのには、ベビーカーでも通りやすく、小さな子どもの手がパンに届きにくいという理由もある。ときにはベビーカー置き場にもなる。
「ママ、パパがゆっくり買い物できればいいなと思って。僕も子どもが3人いるから、子連れで出かける大変さはよく分かるんです」
2店目に明石の地を選んだのは、街の勢いに魅力を感じたから。

「若い世代が移住したり、飲食店をオープンさせたり。元気な街やなと思ったのが一番です。あとは神戸の都心ほどパン屋がないから、新しいパンの文化を発信できる、発信したいと思ったのも大きかったです」

定番商品で自信作の「パンペイザン」(1本1,080円)は高加水の生地が特徴。毎日食べたくなる食事パンで、皮はパリッと中はモチモチ。食べ飽きることのない滋味深い味わいだ。同じく定番の「チャバタ」(248円)も国産小麦の粉に対して水分量が120%という高加水。小麦、水、塩、微量のパン酵母しか使っていないとあって、子どもにも安心して食べさせられると好評だ。その日の温度や湿度に合わせて発酵の時間を微調整しながら、扱いが難しい生地を丁寧にこねて一つずつ焼き上げている。

明石限定の「ドーナツマン」もファンの多い人気商品。生地に限界まで水分を加えることによって、軽い食感ととろけるような口溶けを生み出した。
「食べると、ふわっ、しゅわっという感じ。他にはないドーナツやと思います」
確かに、一口目はかりっと、次にふわふわ。やさしい甘さに驚かされる。軽やかで油っこさのない新感覚のドーナツで、これを目当てにやってくる人が多いというのも納得だ。定番の「シュガー」(216円)にまぶす砂糖も沖縄産の本和香糖というこだわりよう。ほかにクリーム入りのバリエーションもそろえている。

ペルーサンド(648円)/ジェノバサンド(540円)

サンドイッチをはじめとする総菜系パンは、使う具材にも手間暇をかけて調理。肉は塊で仕入れて下処理から始める。週に何度か店頭に並ぶ「ペルーサンド」(648円)にはさむ豚バラ肉は3時間煮込んだ後にからっと揚げて、オリジナルのサルサソースや薄切りのさつまいも、色鮮やかなパクチーで仕上げる。まるでレストランのメインディッシュのような完成度だ。高速船「ジェノバライン」にちなんだ「ジェノバサンド」は、明石の海苔と淡路・北坂養鶏場の新鮮卵が相性ばっちり。
「今、パンの製造現場もオートメーション化が進んでいます。じゃあ、自分たちパン職人ができることって何やろと考えて。うちでは機械で作れないパンを作っていくしかないと思ってるんです。あとは、とにかくいい材料を使いたい。そこも妥協できません。それと色かな。ベーカリーってどうしても店内が茶色っぽくなるので、彩りも意識しています」

毎日60〜70種類のパンが並ぶ
まっくろくろすけのスコーン(248円)

オープン以来、近所から来てくれる人、明石限定商品を目指して垂水から通ってくれる人もいれば、遠方から訪ねてくれる人もいる。
「広島や小豆島から、時間をかけてうちを目指して来てくれる常連さんがいます。遠くからわざわざ来てくれるのはすごくうれしいですね」
着々とファンを増やすなか、水野さんには次なるアイデアも。今年中に店の一角を使ったスタンドバーを計画中とのこと。パンのほか、バー向けのメニューも開発し、ワイン片手に楽しんでもらいたいと目を輝かせる。
「このあたりが人の集まるエリアになっていったらいいなと思ってます。おもしろいやん、楽しいやんと思ってもらって、明石を盛り上げていきたい」
長く営んできたパン店をやむなく畳んだ父にも「おいしい」と言ってもらえたBREADMANのパン。一緒にパン作りができなかったのは残念と言う水野さんだが、父のその言葉は何より心強い。

明石に誕生した新名所BREADMAN明石は、一見おしゃれなベーカリー。でも、それだけじゃない。楽しみながらパン作りに励む水野さんの紡ぎだすあたたかでやさしい時間が店の隅々にまで流れている。

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